オペラ 
怒涛を生きた男の、
壮大な浪漫が、今、蘇る。

はじめに

 ファルハング・グセイノフ作曲、青木英子脚本によるこのオペラは、1700年代に日本伊勢の白子の港からロシアへ漂流し過酷な運命と闘い抜いた船乗り大黒屋光太夫の史実に基づいてつくられました。

 伊勢の船頭・大黒屋光太夫以下17名をのせた神昌丸が、江戸に向かって白子の浜を船出したのは1782年12月の半ばだった。

 途中嵐に遭い、海上をただようこと8ヶ月、翌年の7月アムチトカ島に漂着した。ここから光太夫らの苦難のロシア漂流の旅が始まった。光太夫たちは飢えと寒さと戦いながら、カムチャッカ、オホーツクを経てイルクーツクへ到着した。それまでについやした歳月は6年、生き残った者は僅か5名。望郷の思いはつのるものの、その道ははるか彼方だった。その地で光太夫は、博物学者のラックスマンに出会った。彼の篤い友情と励まし、そしてその娘ソフィアの純愛に勇気づけられ、光太夫の帰国への望みは大きくふくらんで行った。

 ラックスマンのはからいで女帝エカテリーナ二世に拝謁し、女帝から帰国の許しを得た時の光太夫の喜びと感動は言葉に言い尽くせないものがあった。しかし光太夫の気持ちは、帰国への希望とソフィアとの別れを思って複雑だった。そしてロシアとロシア人を知ったいま、光太夫の願いはたんに生きて再び故郷の土を踏みたいという思いを超え、日本とロシアの友好の礎になることを、光太夫に決意させたのである。

 だが、日本への交易使節とともに10年振りに帰国した光太夫を待っていたその運命は・・・・